日常の簡便な確認と調整の方法
ジャーテストはある程度馴れれば、誰にでも出来ますが、やはり試験は機器も必要ですし、やや煩雑です。また、苦労して最適な添加量がわかっても、数日後には原水の変化によって、またテストを行わなければならないこともあり、日常的に実行するにはそれなりの労力を覚悟する必要があります。
ですから、正式な方法ではありませんが、凝集沈殿を例にして、日常の管理は以下の方法もお知らせします。ジャーテスターなどは必要ありませんが、なるべく透明で色が付いていないビーカー等を複数用意してください。プラスチック製でかまいません。
観察
- まず、肉眼で沈殿池を観察します。次に透明なビーカーに沈殿地の水を採水し、良い水質が得られているかを経験に基づいて肉眼で検査します。
- 次に、無機凝集剤の注入されている水槽の水をビーカーに採取し、経験に基づいて、フロックが沈殿していく様子やフロックの形状、また、上澄み液の様子を検査します。
- 次に、高分子が注入されている凝集槽の水を採取し、経験に基づいて、フロックが沈殿していく様子やフロックの形状、また、上澄み液の様子を検査します。
1.2.3を総合的に判断し、適切な凝集から逸脱しているか、最適に近い形かどうかを確認します。管理している方の経験が大切です。
問題がない場合は、そのまま運転していただいてよろしいのですが、不十分な凝集であると判断しましたら、以下に進みます。
足りないのか、多すぎるのかの確認
無機凝集剤を例に取って説明しますが、高分子凝集剤でも同じです。基本的には順番にやっていきます。
無機系の凝集剤が注入されている水槽の水を採取して観察し、フロックの出来方も上澄み液も、もう一つだったという前提です。もちろん、その後の工程の水も不十分でした。
- 大きめのビーカーに、今現在の凝集剤の注入されている槽の水を採取します。
- 凝集剤を追加添加します。これはなるべく少なめにします。(一滴や数滴)pHが凝集範囲から逸脱した場合は、pH調整もします。
- ガラス棒などで撹拌(無機の場合は速く、高分子の場合はゆっくりと)し、沈殿させます。
- 始めに採取したビーカーと、追加添加したビーカーのうわ水やフロックの具合、沈降速度などを見比べます。
つまり、追加添加して、良くなったか、悪くなったかを検査します。
(大体の傾向が分かればよいのですが、分かりにくいようでしたら、追加量を変え、何度か行ってください。)
実機で検証、及び調整
- 追加添加しても良くなかった、悪くなった場合は、注入率を減らしてみます。
- 追加添加して、凝集が良くなる方向に動いた場合は、注入率を増やしてみます。
- 判断に苦しむ場合は、増やす方向から始めてください。(特にPAC)
これは実機で行います。少しずつ行ってください。なぜなら、大きく変えると方向が間違っている場合や行き過ぎた場合、非常に悪い水質になってしまうからです。
- 薬品注入ポンプの注入率を少しだけどちらかに変えましたら、様子を見ます。凝集槽や反応槽の滞留時間を参考にして、少し余分な時間を見てください。
- その後、またビーカーなどに採水し、状況を確認します(うわ水やフロックの具合、沈降速度など)。最初に採取した水と比べて下さい。
- まだ不十分であったが、良くなる方向であったら、さらに少し注入量を変化させ、また様子を見ます。これを繰り返してください。どうしても挙動がおかしかったらいったん注入率を戻し、逆方向を試してください。
- そして、程よい感じになるか、これ以上変化させても変わらない、又はよくなった後に、悪くなり始めてきたら、中止し、良い値で固定します。
次にその状態で、同じように高分子凝集剤の注入率を変化させて最適なところを探ります。
基本的には無機凝集剤を増やせば、高分子凝集剤も増やす方向に行くと思います。
大きく原水の水質が変わらない限り、最適な注入率は短期間にはそれほど変化しませんので、わずかな調整だけで済みます。最初にある程度あっていれば、その後は簡単に調整できると思われます。
基本的には原水の性状があまり変化しなければ、濃くなれば濃くなるほど、最適な注入率は上昇します。
この方法は経験が大切ですので、凝集の様子や挙動をよく観察しておいてください。
最後に
手馴れてきましたら、日々の原水や凝集の状況などから、足りないのか、多すぎるかのある程度の判断が出来るようになると思います。
その場合、いきなり実機で無機や高分子などの調整を行ってもかまいません。ただし、様子を見ながら、始めから大きく変化させないようにし、いつでも戻せるように最初の値を記録しておいてください。
適正な注入率は日々変わることがあります。もちろん大きく変化することはありませんが、いつも凝集の状況を観察し、必要が生じたら、調整を加えてください。
また、薬品の注入率の値を日報や月報などに記録し、日々の管理に利用してください。処理施設によって、どの程度の範囲の値が良いか、又は、条件(原水水質など)によって、どの程度が良かったのかが分かっていれば、参考になるからです。
また、脱水の凝集も参考にして下さい。