脱窒素行程

脱窒素行程では、硝化工程で硝化された排水を溶存酸素のない条件下(無酸素)におき、脱窒素菌の硝酸呼吸、或いは、亜硝酸呼吸を利用して、N2ガスに還元します。

 

すなわち脱窒素菌は、好気性状態でも嫌気性状態でも増殖できる通性嫌気性細菌です。嫌気性状態では分子状酸素の代わりにNO2ないし、NO3を水素受容体として呼吸し、化学量論的に次式で表されます。

 

亜硝酸呼吸
脱窒工程

 

硝酸呼吸
脱窒工程

 

上式のH2は、微生物内の呼吸酵素系を経由して、水素供与体(基質)から与えられます。
上記は細胞外に水素供与体がある場合で、これとは別に細胞内物質を水素供与体とする内生呼吸型脱窒素があります。

 

脱窒素菌の種類として、水素ガスや硫化物を水素供与体とする自栄養性のものと、有機物を水素供与体とする他栄養性のものがありますが、ほとんどのものは、他栄養性のものです。

 

脱窒に必要な水素供与体としての有機物量は、計算により求められますが、脱窒素菌は、有機物を単に呼吸基質としてばかりでなく、細胞合成の炭素源としても利用するため、実際には計算量より30%〜40%余分な有機物を必要とします。

 

水素供与体としては、メタノールが優れていますが、これは一炭素化合物であるため、これを資化できる脱窒素菌の菌種は限られますので、注意を要します。

 

ちなみに内生呼吸型の場合の脱窒素速度は、1/10程度であるため、その適用は特定の場合に限られます。

 

しかし、最近ではアナモックス菌を使った脱窒プロセスも実用化されつつあります。
これは亜硝酸までの酸化でよく、反応に有機炭素元が不要であり、活性も高い脱窒素菌を使ったシステムです。

 

脱窒素反応が遅滞なく進行するための条件

 

  • 混合培養液に溶存酸素が存在しないこと。
  • 適当な水素供与体が適量存在すること。
  • 毒性物質が排水中に含まれていないこと。
  • 混合培養液が適切な水温、pHに維持されていること。

 

脱窒素菌の活性の水温の影響

この細菌の活性は水温に強く影響され、代表的な脱窒素菌の最適水温は37〜39℃の範囲になります。

 

脱窒素菌の脱窒素機能のpHによる影響

脱窒素機能は、混合培養液のpHに強く影響され、アルカリ側に最適pH域があり、硝化工程のpHを7〜8の範囲でコントロールしてあっても、脱窒素反応によって、アルカリが遊離され、かなりアルカリ側に偏差しますので、脱窒素菌にとっては好ましい生活環境になります。

 

脱窒素菌の脱窒における溶存酸素の影響

0.5r/L以上でも脱窒を起こす菌種も知られていますが、0もしくは、0.2r/L以下であることが望ましいです。ORPは、-100mVから、-200mV程度が良いようです。

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