ゼータ電位は推定できるか

ゼータ電位

液体中に分散しているコロイド粒子の多くは、プラスまたはマイナスに帯電しています。これがゼータ電位です。汚水中、汚泥中の微粒子は、ほとんどの場合、−20〜−30mXぐらいのマイナスのゼータ電位を持っています。

 

プラスとプラスは反発し合い、マイナスとマイナスは反発し合うというクーロンの電荷の法則によって、分散を保ちます。また、微粒子はブラウン運動によって複雑な動きをしますから、留まることもありません。

 

ですから、静電力(クーロンの電荷の法則)の反発力を消して凝集させるために、このマイナスを打ち消し、電位的にゼロ近辺に持って行くために、プラスの電荷を供給する必要があります。

 

問題となるのは、どの程度の量のプラスの電荷を供給する必要があるかと言うことです。足りなければ電位を打ち消すことは出来ませんし、多すぎれば、逆にプラス過剰の反発状態になり、やはり良い凝集を得ることは出来ません。

 

このゼータ電位が形成される要因は様々です。
多くの場合、水中の粒子から遠く離れたところ(ミクロ的な距離です)では、プラスとマイナスの電荷が相殺されて電気的中性を保っていますが、粒子近辺は粒子の反対の電荷を持ったイオンが取り巻きます。そして、その周りには、さらにその反対の電荷を持ったイオンが取り巻く複雑な状態になっています。

 

これを「電気二重層が形成される」と表現します。しかし、さらにその形成は単純ではなく、水中のイオンは熱運動のために常に攪乱されていますので、非常に複雑な状態(拡散電気二重層)になっていて、まったく電位の予測が出来ません。また、粒子内部の電荷もゼータ電位の形成に関わりますので、ブラックボックスの中のような状態で、またそのブラックボックスは複雑に刻々と変化もします。

 

従って、計算してゼータ電位を推定出来る方法は、確立されていませんし、今後も確立される可能性は皆無です。計算の元となる数値が観測出来ないためです。これは移り変わるそよ風の中、スカイツリーの天辺から一枚の羽毛を落として、どこに落下するかを計算で出すようなものです。

 

ゼータ電位の測定は可能ですが、それは未だに研究室レベル、研究レベルのの話で、現場で凝集の参考にするために測定するのは環境面でも経済面でも難しく、また状態の変化によって毎日のように変わる可能性がありますので、測定は現実的な方法ではありません。
また、他の様々な要因によっても凝集剤の適正添加量は影響を受けますので、数値化して法則的に添加量を決めることは、ゼータ電位の測定が可能でも、まだまだ研究段階の状態です。

 

ですから、折に触れ、凝集テストを行う必要もあります。現実的には現場での調整で、トライ&エラーで添加量を決める必要もあります。


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